住宅ローンを完済したら、次にやるべきことが「抵当権抹消の手続き」です。ローンを返し終えても、抵当権は自動的に消えるわけではなく、自分で法務局に申請して抹消する必要があります。
「手続きは難しそう」「司法書士に頼まないとできないのでは?」と思う方も多いかもしれませんが、抵当権抹消の手続きは自分で行うことも可能です。費用も司法書士に依頼する場合と比べて大幅に抑えられます。
この記事では、抵当権抹消の手続きを自分で行う方法を5ステップでわかりやすく解説します。必要書類や費用の相場、放置した場合のリスク、追加書類が必要になるケースまで網羅的に紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
そもそも抵当権とは?抵当権抹消の基礎知識
抵当権とは
抵当権とは、住宅ローンなどの借入金の返済を担保するために、金融機関が不動産(土地や建物)に設定する権利のことです。万が一ローンの返済が滞った場合、金融機関は抵当権を行使して不動産を競売にかけ、貸したお金を回収できる仕組みになっています。
住宅ローンを組む際には、購入する不動産に抵当権が設定され、法務局の登記簿に記録されます。
抵当権抹消とは
抵当権抹消とは、住宅ローンを完済した後に、登記簿に記録されている抵当権の記載を削除する手続きのことです。法務局に「抵当権抹消登記」を申請して行います。
ローンを完済しても抵当権は自動で消えない
住宅ローンを完済しても、抵当権の登記は自動的には消えません。債務者側が抵当権の抹消手続きを行わない限り、登記簿上に抵当権の記載は残り続けます。
ローンを完済すると、金融機関から抵当権抹消に必要な書類一式が送られてきます。この書類を使って、自分で法務局に申請するか、司法書士に依頼して手続きを行う必要があります。
抵当権抹消をしないとどうなる?放置するリスク
抵当権抹消の手続きには法律上の期限はありませんが、放置すると以下のようなリスクが生じます。早めの手続きを強くおすすめします。
不動産の売却ができない
抵当権が残ったままの不動産は、原則として売却することができません。買主にとって「いつ競売にかけられるかわからない不動産」を購入するリスクがあるためです。売却を検討する際には、事前に抵当権を抹消しておく必要があります。
新たなローンが組めない
住み替えやリフォームのために新たにローンを組もうとしても、既存の抵当権が登記簿に残っていると、金融機関の審査で不利になります。すでにローンは完済しているにもかかわらず、「まだ返済中」と判断されてしまう可能性があります。
必要書類の再取得が困難になる
ローン完済時に金融機関から届く書類は、時間が経つほど紛失するリスクが高まります。また、金融機関の合併や代表者の変更があると、追加書類が必要になり手続きが複雑化します。数十年放置すると、金融機関自体が存在しなくなっているケースもあります。
相続時に手続きが複雑化する
抵当権を抹消しないまま不動産の所有者が亡くなると、相続人が抵当権抹消と相続登記の両方を行わなければなりません。相続人が複数いる場合は全員の協力が必要となり、手続きは大幅に複雑化します。
抵当権抹消が必要になるタイミング
抵当権抹消の手続きが必要になる主なタイミングは以下の4つです。
- 住宅ローンを完済したとき:最も一般的なケース。完済後にできるだけ早く手続きするのが望ましい
- 不動産を売却するとき:売却前に抵当権を抹消する必要がある。売却と同時に抹消する方法もある
- 住宅ローンを借り換えるとき:旧ローンの抵当権を抹消し、新ローンの抵当権を設定する
- 相続が発生したとき:故人名義の不動産にローン完済済みの抵当権が残っている場合、相続登記とあわせて抹消する
抵当権抹消の費用はいくら?自分と司法書士の比較
自分で行う場合の費用
自分で抵当権抹消の手続きを行う場合の費用は、土地1筆・建物1棟で約3,000〜5,000円程度です。
| 費用項目 | 金額 |
| 登録免許税 | 不動産1件につき1,000円(土地1筆+建物1棟=2,000円) |
| 登記事項証明書(事前確認用) | 1通600円 |
| 登記完了後の登記事項証明書 | 1通600円 |
| 交通費・郵送費など | 数百円〜 |
| 合計目安 | 約3,000〜5,000円 |
司法書士に依頼する場合の費用
司法書士に依頼する場合、上記の実費に加えて司法書士報酬がかかります。
| 費用項目 | 金額 |
| 登録免許税 | 2,000円(土地1筆+建物1棟) |
| 司法書士報酬 | 10,000〜15,000円程度 |
| その他実費 | 2,000円程度 |
| 合計目安 | 約15,000〜20,000円 |
自分でやるか司法書士に依頼するかの判断基準
| 状況 | おすすめの方法 |
| 住所・氏名の変更がなくシンプルなケース | 自分で行う(費用を大幅に節約できる) |
| 平日に法務局へ行ける時間がある | 自分で行う |
| 住所変更・金融機関の合併など特殊ケースがある | 司法書士に依頼する方が安心 |
| 相続が絡む場合 | 司法書士に依頼する(手続きが複雑) |
| 売却と同時に抹消する場合 | 司法書士に依頼する(買主の登記とあわせて処理) |
| 手続きに不安がある・時間をかけたくない | 司法書士に依頼する |
抵当権抹消に必要な書類一覧
抵当権抹消に必要な書類は、金融機関から届くものと自分で用意するものに分かれます。
金融機関から届く書類
ローン完済後、通常1〜2週間で金融機関から以下の書類が送られてきます。
| 書類名 | 内容 |
| 弁済証書(解除証書・完済証明書) | ローンを完済したことを証明する書類 |
| 登記済証または登記識別情報通知 | 抵当権設定時に発行された書類。抹消申請に必要 |
| 登記事項証明書(代理権限証明情報) | 金融機関の資格を証明する書類(発行日から3か月以内のもの) |
| 委任状 | 金融機関が抵当権抹消を不動産所有者に委任する書類 |
自分で用意する書類
| 書類名 | 入手方法 |
| 登記申請書 | 法務局のWebサイトからダウンロード、または窓口で入手 |
| 登記事項証明書(事前確認用) | 法務局の窓口(600円)またはオンライン請求(500円)で取得 |
| 本人確認書類 | 運転免許証やマイナンバーカードなど |
自分で抵当権抹消を行う手順【5ステップ】
抵当権抹消の手続きは、以下の5ステップで進めます。
ステップ1:必要書類を準備する
まず、金融機関から届いた書類一式を確認します。以下の4点が揃っているか確認しましょう。
- 弁済証書(解除証書・完済証明書)
- 登記済証または登記識別情報通知
- 登記事項証明書(代理権限証明情報)
- 委任状
あわせて、法務局で登記事項証明書を取得し、現在の登記内容(抵当権の設定日・受付番号・債権者名など)を確認しておくとスムーズです。
ステップ2:管轄の法務局を確認・相談する
不動産の所在地を管轄する法務局を確認します。管轄の法務局は、法務局の公式Webサイトで検索できます。
初めて手続きする場合は、書類一式を持参して法務局の相談窓口を利用するのがおすすめです。記入方法や不備がないかを事前にチェックしてもらえます。
ステップ3:登記申請書を作成する
登記申請書は法務局のWebサイトからテンプレートをダウンロードできます。記入例も公開されているので、それを参考に作成しましょう。
主な記入項目は以下のとおりです。
| 記入項目 | 記入内容 |
| 登記の目的 | 「抵当権抹消」と記載 |
| 原因 | 完済日付「令和○年○月○日 弁済」(弁済証書に記載の日付) |
| 抹消すべき登記 | 「○年○月○日受付第○○○○号」(登記済証に記載の情報) |
| 権利者 | 不動産所有者の住所・氏名 |
| 義務者 | 金融機関の本店所在地・名称・代表者名 |
| 添付情報 | 「登記原因証明情報 登記識別情報 代理権限証明情報」 |
| 申請日・申請先 | 「令和○年○月○日 ○○法務局 御中」 |
| 申請人兼義務者代理人 | 不動産所有者の住所・氏名・連絡先電話番号 |
| 登録免許税 | 「金○○○○円」(不動産の数×1,000円) |
| 不動産の表示 | 登記事項証明書の内容を転記(所在・地番・地目・地積 / 家屋番号・構造・床面積など) |
ステップ4:法務局に申請する
作成した登記申請書と必要書類をまとめて、法務局に申請します。申請方法は「窓口提出」「郵送」「オンライン」の3つがあります(詳しくは次のセクションで比較します)。
窓口に提出する場合は、登録免許税分の収入印紙を購入し、申請書に貼付して提出します。収入印紙は法務局の窓口でも購入できます。
ステップ5:登記完了を確認し書類を受け取る
申請後、法務局で審査が行われます。処理にかかる期間は、法務局の混雑状況にもよりますが、おおむね1週間〜10日程度です。
申請時に「補正日」(審査結果がわかる日)を教えてもらえるので、その日以降に法務局に連絡するか窓口を訪問して、処理が完了したか確認しましょう。
登記完了後は、登記完了証が交付されます。また、登記事項証明書を取得して、抵当権の記載が削除されていることを確認しておくと安心です。
申請方法の比較【窓口・郵送・オンライン】
抵当権抹消登記の申請方法は3つあります。それぞれのメリット・デメリットを比較します。
| 項目 | 窓口提出 | 郵送 | オンライン |
| 手軽さ | △ 法務局に行く必要あり | ○ 自宅から可能 | ○ 自宅から可能 |
| 相談 | ◎ その場で相談できる | × できない | × できない |
| 処理期間 | 1週間〜10日程度 | 1〜2週間程度(郵送日数含む) | 1週間〜10日程度 |
| 必要なもの | 特になし | 書留郵便の送料 | マイナンバーカード、ICカードリーダー |
| おすすめの人 | 初めて手続きする人 | 平日に法務局へ行けない人 | PC操作に慣れている人 |
初めて手続きする方は「窓口提出」がおすすめです。不備があればその場で指摘してもらえるため、やり直しの手間を省けます。
郵送の場合は、書留郵便で送付し、返送用の封筒(切手貼付済み)を同封しましょう。
オンライン申請は「登記・供託オンライン申請システム(登記ねっと)」を利用します。電子署名にはマイナンバーカードとICカードリーダーが必要です。ただし、金融機関から届いた書類(原本)は別途、郵送または窓口で提出する必要があります。
抵当権付きの不動産の売却を考えている方は以下の記事もご覧ください。

追加書類が必要になる4つのケース
抵当権設定時から時間が経っている場合、以下のケースでは通常の書類に加えて追加の書類が必要になります。
ケース1:住所・氏名が変わっている場合
抵当権設定時の住所や氏名と現在の住所・氏名が異なる場合は、抵当権抹消の前に「登記名義人住所(氏名)変更登記」を行う必要があります。
- 住民票の写し(住所変更の場合)
- 戸籍謄本(氏名変更の場合)
- 登記名義人住所変更の登記申請書
この変更登記にも登録免許税が不動産1件につき1,000円かかります。
ケース2:金融機関が合併・統合した場合
ローンを借りた金融機関がその後、合併や統合をしていた場合は、金融機関の変更を証明する書類が追加で必要です。
- 合併(統合)を証明する書類(金融機関から取得)
- 変更後の金融機関の登記事項証明書
合併の場合には、抵当権抹消の前提として金融機関の移転登記や変更登記が必要になることもあり、その費用は一般的に自己負担となります。ローン完済直後に手続きした場合と比較すると、費用がおよそ2倍になるケースもあります。
ケース3:金融機関の代表者が変わった場合
抵当権設定時と現在とで金融機関の代表者が異なることはよくあります。この場合、金融機関から届く書類は通常最新の代表者名で発行されるため、多くの場合は問題なく手続きできます。
委任状や登記事項証明書に記載されている代表者名が現在の代表者であれば、特に追加書類は不要です。
ケース4:住所変更登記をしていなかった場合
過去に引っ越しをしたものの住所変更登記を行っていなかった場合は、ケース1と同様に、まず住所変更登記を行ってから抵当権抹消の手続きを進めます。
複数回の引っ越しをしている場合は、住所のつながりを証明するために住民票の除票や戸籍の附票が必要になることがあります。
相続した不動産の抵当権抹消

相続した不動産に完済済みの抵当権が残っている場合は、以下の流れで手続きを進めます。
手続きの流れ
- 遺産を確認して相続人で話し合う:不動産の登記事項証明書を取得し、抵当権の有無やローンの残債を確認する。相続人が複数いる場合は遺産分割協議で不動産を誰が相続するかを決める
- 相続登記を行う:不動産の名義を被相続人(故人)から相続人に変更する。2024年4月より相続登記は義務化されており、相続を知った日から3年以内に登記しないと10万円以下の過料が科される可能性がある
- 抵当権抹消登記を行う:相続登記が完了した後、相続人の名義で抵当権抹消の申請を行う。手順は前述の5ステップと同じ
相続が絡む場合は手続きが複雑になるため、司法書士に相談することをおすすめします。
相続登記に必要な主な書類
| 書類 | 備考 |
| 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 | 本籍地の市区町村役場で取得 |
| 相続人全員の戸籍謄本 | 現在の本籍地で取得 |
| 相続人全員の住民票 | 住所地の市区町村役場で取得 |
| 不動産の固定資産税評価証明書 | 不動産所在地の市区町村役場で取得 |
| 遺産分割協議書(協議で決めた場合) | 相続人全員の署名・実印が必要 |
| 相続人全員の印鑑証明書(協議で決めた場合) | 住所地の市区町村役場で取得 |
抵当権抹消に関するよくある質問
まとめ
抵当権抹消の手続きは、住所変更や金融機関の合併などの特殊な事情がなければ、自分で行うことも十分に可能です。費用も約3,000〜5,000円と、司法書士に依頼する場合の15,000〜20,000円と比べて大幅に節約できます。
手続きの流れは、必要書類の準備 → 管轄法務局への相談 → 登記申請書の作成 → 申請 → 完了確認の5ステップです。法務局のWebサイトには申請書のテンプレートや記入例も用意されているので、初めてでも取り組みやすい手続きといえます。
ただし、住宅ローンを完済した後に放置していると、不動産の売却ができない、必要書類の再取得が困難になるなど、さまざまなリスクが生じます。完済後はできるだけ早く抵当権の抹消手続きを済ませましょう。
※「資産活用おすすめナビ」は以下に記載されたリンク先からの情報をもとに、制作・編集しております。
・https://www.rosenka.nta.go.jp/
・https://www.retpc.jp/chosa/reins/
・https://www.zentaku.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/02/2021-fudousan-anke-to.pdf

