抵当権付き不動産は売買可能?売却する条件や抵当権抹消の流れも紹介

抵当権付き不動産 購入

住宅ローンを組んで購入した不動産には、金融機関による「抵当権」が設定されています。転勤や住み替え、離婚などの事情で不動産を売却したいとき、「抵当権が付いたまま売れるのだろうか」と不安に思う方は多いのではないでしょうか。

この記事では、抵当権の基礎知識から、抵当権付き不動産を売却する3つの方法、抵当権抹消の流れ、相続時の注意点までわかりやすく解説します。

目次

そもそも抵当権とは?

まずは抵当権の基本的な仕組みを理解しておきましょう。

抵当権は住宅ローンの担保となる権利

抵当権とは、住宅ローンを組む際に、金融機関が貸付金の担保として不動産に設定する権利のことです。住宅ローンの契約時に「抵当権設定登記」が行われ、不動産の登記簿に記載されます。

借入者がローンの返済を続けている間は、不動産を通常どおり使用・居住できます。ただし、返済が滞った場合には、金融機関が抵当権を行使して不動産を差し押さえる可能性があります。

抵当権が行使されるとどうなる?

ローンの返済ができなくなると、金融機関は抵当権を行使し、不動産を「競売(けいばい)」にかけることができます。競売にかけられた場合、以下のようなデメリットがあります。

  • 売却価格が低くなる:市場価格より30〜50%程度安くなる傾向がある
  • 残債の一括返済を求められる:競売代金で返済しきれなかった残債は、一括で支払いを求められる可能性がある
  • 退去を求められる:落札者に所有権が移るため、住み続けることはできない

競売は売主にとって不利な条件が多いため、できるだけ回避することが重要です。

抵当権と根抵当権の違い

通常の抵当権と似た仕組みに「根抵当権」があります。両者の違いは以下のとおりです。

項目抵当権根抵当権
担保する債権特定の1つのローン極度額の範囲内で複数の債権
借入・返済完済すると消滅繰り返し借入・返済が可能
主な利用場面住宅ローン事業資金の融資
個人での利用一般的まれ

根抵当権は主に経営者や企業が事業用不動産に設定するもので、個人の住宅ローンで設定されるケースはほとんどありません。

抵当権付きの不動産は売却できる?

法的には売却可能だが実質的に抹消が必要

結論として、抵当権が設定されている不動産でも、法律上は売買が可能です。抵当権が付いていることを理由に売却を禁止する法律はありません。

ただし、実際の取引では抵当権付きのまま購入する買主はほとんどいません。買主にとっては、前の所有者がローンを滞納した場合に物件が差し押さえられるリスクがあるためです。そのため、不動産を売却する際は、引き渡しまでに抵当権を抹消することが基本的な条件となります。

まずはアンダーローンかオーバーローンかを確認

抵当権付き不動産の売却方法を決めるうえで、最初に確認すべきは「アンダーローン」と「オーバーローン」のどちらに該当するかです。

状態条件売却の難易度
アンダーローン売却価格 ≧ ローン残債売却代金で完済できるため比較的スムーズ
オーバーローン売却価格 < ローン残債不足分を自己資金で補うか、任意売却を検討

確認方法は以下のとおりです。

  1. ローン残債の確認:金融機関の残高証明書、ローン返済予定表、またはインターネットバンキングで確認
  2. 売却価格の見込みを確認:不動産会社に査定を依頼するか、不動産一括査定サイトを利用

アンダーローンかオーバーローンかによって、取るべき売却方法が変わります。

抵当権付き不動産を売却する3つの方法

抵当権付きの不動産を売却するには、大きく3つの方法があります。自分の状況に合った方法を選びましょう。

方法①:手持ち資金でローンを完済してから売却

預貯金などの手持ち資金でローンを完済し、抵当権を抹消してから売却活動を始める方法です。

メリット:

  • 抵当権のない状態で売却するため、買主が見つかりやすい
  • 売却スケジュールに余裕を持てる

デメリット:

  • まとまった自己資金が必要
  • ローン残債が大きい場合は現実的でないことが多い

資金に余裕がある方や、ローン残債が少ない方に適した方法です。

方法②:売却代金でローンを完済する(同時決済)

不動産の売却代金でローンを完済し、抵当権の抹消と所有権の移転を同日に行う方法です。これを「同時決済」と呼びます。

同時決済の流れ:

  1. 不動産会社に売却を依頼し、買主を見つける
  2. 売買契約を締結する
  3. 決済日に買主から売却代金を受け取る
  4. 受け取った代金で金融機関にローンを一括返済する
  5. 金融機関から抵当権解除の書類を受け取る
  6. 司法書士が抵当権抹消登記と所有権移転登記を同日に申請する

メリット:

  • 自己資金がなくても売却可能(アンダーローンの場合)
  • 最も一般的に利用される売却方法

デメリット:

  • 決済日の手続きが多く、関係者間の連携が必要
  • 売却価格がローン残債を下回ると利用できない

アンダーローンの方に最もおすすめの方法です。多くの住宅売却はこの方法で行われています。

方法③:任意売却(オーバーローンの場合)

売却代金でローンを完済できないオーバーローンの場合に、金融機関と協議のうえ、ローンが残った状態で抵当権を抹消してもらう方法が「任意売却」です。

任意売却は競売と比べて高い価格で売れる可能性があり、金融機関にとってもより多くの貸付金を回収できるため、一定の条件を満たせば認められるケースがあります。詳細な流れやメリット・デメリットは、次の章で解説します。

任意売却の流れとメリット・デメリット

任意売却の条件

任意売却を行うには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 金融機関(債権者)の合意が得られること
  • 不動産が差し押さえられていないこと
  • 売却活動を行うための時間的猶予があること
  • 物件に一定の市場価値があること

特に金融機関の合意は必須条件です。任意売却を検討する場合は、早めに金融機関と相談することが重要です。

任意売却の流れ(7ステップ)

任意売却は、一般的に以下の流れで進みます。

  1. ローンの返済が困難になり、金融機関から督促を受ける
  2. 任意売却に対応できる不動産会社に相談する
  3. 不動産会社が物件を査定する
  4. 金融機関に任意売却の申請を行い、合意を得る
  5. 売却活動を開始する
  6. 購入希望者と売買契約を締結する
  7. 決済・物件の引き渡しを行う

任意売却にかかる期間は、一般的に3〜6ヶ月程度です。競売の手続きが進行している場合は、開札日までに売却を完了させる必要があります。

任意売却のメリット

  • 競売より高い価格で売却できる可能性がある:通常の仲介売買に近い形で取引できるため、市場価格に近い金額で売れることが多い
  • 引っ越し時期を調整できる:競売と異なり、買主との交渉で引き渡し時期を調整できる
  • 近隣に知られにくい:競売のように裁判所の公告に掲載されないため、プライバシーを守りやすい
  • 残債の返済条件を交渉できる場合がある:金融機関によっては、残債を分割返済に切り替えてもらえるケースもある

任意売却のデメリット

  • 売却が成立しない可能性がある:買主が見つからない場合、最終的に競売に移行することがある
  • 信用情報に記録される:ローンの滞納が前提となるため、いわゆる「ブラックリスト」に載る可能性がある
  • 金融機関の合意が得られない場合がある:すべてのケースで認められるわけではない

抵当権付き不動産を賃貸に出す選択肢

売却ではなく、抵当権付きの不動産を賃貸に出すという選択肢もあります。実際、多くの賃貸物件には抵当権が設定されています。

賃貸に出すメリット

  • 家賃収入でローン返済を継続できる
  • 不動産を手放さずに済む
  • 将来的に不動産価格が上昇した際に売却できる

賃貸に出すデメリット・注意点

  • 住宅ローンのままでは賃貸に出せない場合がある:住宅ローンは「自己居住用」が条件のため、金融機関への相談が必要
  • 空室リスクがある:入居者が見つからなければ、ローン返済と維持費が持ち出しになる
  • 管理の手間やリフォーム費用がかかる

賃貸に出す場合は、必ず事前に金融機関に相談し、ローン契約の条件を確認しましょう。無断で賃貸に出すと、契約違反として一括返済を求められる可能性があります。

抵当権抹消登記の基礎知識

不動産を売却する際には、抵当権抹消登記の手続きが必要になります。ここでは概要を解説します。

抵当権抹消登記の流れ(概要)

抵当権抹消登記の基本的な流れは以下のとおりです。

  1. ローンを完済する:金融機関に残債を支払い、完済する
  2. 必要書類を受け取る:金融機関から弁済証書、登記済証(または登記識別情報)、委任状などを受け取る
  3. 法務局に申請する:物件所在地を管轄する法務局で、抵当権抹消登記を申請する
  4. 登記完了:通常1〜2週間で手続きが完了する

手続きは自分で行うことも、司法書士に依頼することも可能です。売却に伴う同時決済の場合は、司法書士に依頼するのが一般的です。

手続きの詳細や必要書類については、以下の記事で詳しく解説しています。

抵当権抹消にかかる費用

抵当権抹消にかかる主な費用は以下のとおりです。

費用項目金額の目安
登録免許税不動産1つにつき1,000円
登記事項証明書の取得費用1通600円(窓口の場合)
事前調査費用(登記情報)1件331円(登記情報提供サービス利用時)
司法書士報酬(依頼する場合)10,000〜20,000円程度

土地と建物はそれぞれ別の不動産として扱われるため、一戸建ての場合は登録免許税が2,000円(土地1,000円+建物1,000円)かかります。

抵当権は自動的には抹消されない

住宅ローンを完済しても、抵当権は自動的に消えるわけではありません。完済後に自分で(または司法書士に依頼して)法務局に抹消登記を申請する必要があります。

金融機関が代わりに手続きしてくれることもないため、完済後は速やかに抹消手続きを行いましょう。抵当権が残ったままだと、将来の売却や新たなローンの借入に支障が出る可能性があります。

相続した不動産に抵当権がついていた場合

親や親族から不動産を相続した際に、抵当権が設定されていることがあります。相続特有の注意点を確認しておきましょう。

団信(団体信用生命保険)の加入を確認

まず確認すべきは、被相続人(亡くなった方)が「団体信用生命保険(団信)」に加入していたかどうかです。

団信に加入していた場合、被相続人の死亡によって保険金が支払われ、住宅ローンの残債が完済されます。この場合、金融機関から届く書類をもとに抵当権抹消登記を行えば、ローンの負担なく不動産を相続できます。

団信に加入していなかった場合は、ローンの残債も相続の対象となります。

債務は法定相続人全員で等分負担

団信に未加入で住宅ローンが残っている場合、その債務は法定相続人全員が法定相続分に応じて負担します。

ただし、遺産分割協議によって、不動産を相続する人が債務の返済義務もまとめて引き受けることも可能です。この場合、金融機関の承諾が必要になります。相続した家に抵当権がついていた場合は、誰が返済義務を負うのかについて、事前にしっかりと話し合っておきましょう。

抵当権付き不動産も相続税の対象

抵当権が設定されている不動産であっても、相続税の課税対象になります。不動産の評価額は、他の不動産と同じ方法(路線価方式や倍率方式)で算出されます。

なお、住宅ローンの残債がある場合は「債務控除」として相続財産から差し引くことができます。相続税の基礎控除額は以下の計算式で求められます。

基礎控除額 = 3,000万円 +(法定相続人の数 × 600万円)

相続財産の総額がこの基礎控除額以下であれば、相続税は発生しません。

抵当権の有無は登記事項証明書で確認

相続した不動産に抵当権が設定されているかどうかは、「登記事項証明書(登記簿謄本)」の乙区欄で確認できます。乙区欄には、所有権以外の権利(抵当権、根抵当権、地上権など)が記載されています。

登記事項証明書の取得方法は以下の3つです。

取得方法費用
法務局の窓口で取得600円
郵送で請求600円+郵送費
オンライン(登記・供託オンライン申請システム)で請求490〜520円

オンライン申請のほうが費用を抑えられるため、おすすめです。

相続放棄という選択肢

不動産の価値よりもローンの残債が大きい場合など、債務の負担が大きいケースでは「相続放棄」を検討することも選択肢の一つです。

相続放棄をすると、初めから相続人ではなかったものとして扱われ、不動産を含むすべての財産と債務を引き継がないことになります。

注意点:

  • 相続放棄の期限は、相続の開始を知った日から3ヶ月以内
  • 家庭裁判所への申述が必要
  • プラスの財産(預貯金など)も含めてすべてを放棄する必要がある
  • 他の相続人に影響が及ぶため、事前に家族で話し合うことが重要

抵当権付き不動産の売買に関するよくある質問

抵当権が付いたまま不動産を売ることはできますか?

法律上は、抵当権が付いたまま不動産を売買することは可能です。ただし、買主にとっては差し押さえのリスクがあるため、実際の取引では引き渡しまでに抵当権を抹消することが求められます。最も一般的な方法は、売却代金でローンを完済し、抵当権抹消と所有権移転を同日に行う「同時決済」です。

住宅ローンを完済したら抵当権は自動で消えますか?

いいえ、住宅ローンを完済しても抵当権は自動的には抹消されません。法務局で「抵当権抹消登記」の手続きを行う必要があります。手続きは自分で行うことも、司法書士に依頼することも可能です。完済後は速やかに手続きしましょう。

抵当権抹消の費用はいくらかかりますか?

抵当権抹消にかかる費用は、登録免許税が不動産1つにつき1,000円、登記事項証明書の取得に約600円です。一戸建ての場合、土地と建物で合計2,000円程度の登録免許税がかかります。司法書士に依頼する場合は、別途10,000〜20,000円程度の報酬が必要です。

相続した家の抵当権はどうすればよいですか?

まずは被相続人が団体信用生命保険(団信)に加入していたかを確認しましょう。団信に加入していれば、保険金でローンが完済され、抵当権抹消の手続きを行うだけで済みます。団信に未加入の場合は、ローン残債も相続対象となるため、返済の見通しが立たなければ相続放棄(3ヶ月以内)も検討しましょう。

まとめ

抵当権は住宅ローンを組む際に設定される担保権ですが、抵当権付きの不動産であっても売却は可能です。売却方法は主に3つあり、自分の状況に合わせて選択することが重要です。

状況おすすめの方法
手持ち資金に余裕がある方法①:完済後に売却
アンダーローン(売却価格≧残債)方法②:同時決済
オーバーローン(売却価格<残債)方法③:任意売却

抵当権抹消の手続きは自分でもできますが、売却に伴う場合は司法書士に依頼するのが安心です。また、相続で取得した不動産の場合は、団信の加入状況を確認したうえで、相続放棄も含めた判断をしましょう。

不動産の売却を検討しているなら、まずは不動産会社に査定を依頼し、売却価格の見込みとローン残債を比較するところから始めてみてください。

執筆者

資産活用おすすめナビ運営チームです。不動産の一括査定・売却・買取・媒介契約や、売却時の税金・手続きを担当する運営チームです。公的機関や各社の公式情報、運営チームの独自アンケート調査をもとに、はじめての売却でも損をしないための情報を、メリットだけでなく注意点もあわせて整理しています。

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